このところ、「飲酒運転」「逆走」「児童の列に突っ込む」といった、痛ましく悪質な交通事故の報道が後を絶ちません。

もし、そんな事故を自社の社員が引き起こしてしまったら――。

業務中や通勤中の交通事故対応について、あなたの職場では十分な備えができていますか?

統計によれば、交通事故全体の約4割が業務中または通勤・退勤中に発生しています(2024:JAF)。企業がどれほど注意を払っていても、交通事故は“完全に防ぐことができないリスク”と言えます。

特に社用車を使用している企業にとっては、社用車事故発生時の初動対応と事前のリスク管理が、企業の信頼性に大きく影響します。

今回は、企業のリスク管理として押さえておくべき基本的なポイントを4つに分けて紹介していきます。

1.「その時、どう動く?」 事故対応の基本をおさらい

交通事故が発生した際、運転者が冷静に適切な手順で行動できるかどうかが、その後の被害拡大やトラブルを防ぐカギとなります。

運転者の初動対応の基本として

  1. 負傷者の救護:119番通報と応急手当の実施
  2. 続発事故の防止:車両や障害物を安全な場所へ移動し、エンジンを停止
  3. 警察への通報:人身・物損を問わず必ず110番通報
  4. 相手情報の確認:氏名・住所・連絡先・車両ナンバー等を記録
  5. 会社への連絡:安全運転管理者や担当部署へ報告

社員が交通事故を起こした際、パニックに陥って適切な対応ができないケースも少なくありません。「小さな接触事故だから」と警察に届け出をせず帰社してしまう、いわゆる“当て逃げ”などは企業の信頼性を大きく損なう恐れがあります。

事故発生時に適切な対応行動が取れるよう、フローチャートなどによる交通事故対応マニュアルの作成および定期的な教育・訓練が求められます。

2.まずは報告、そして連携――社内での正しい事故対応とは

交通事故発生時、最も重要なのは迅速かつ正確な初期対応と社内連絡です。社員からの交通事故連絡を受けた社内担当者は、以下の項目を含む事故概要を速やかに関係部署へ報告しましょう。

一次報告に含めるべき情報として

  1. 発生日時・場所
  2. 社員および相手方の情報
  3. 被害状況(人身・物損の程度など)
  4. 警察への届出状況
  5. 現在の対応状況

また、事故直後は相手との過失割合などでトラブルが生じることがあります。保険会社や顧問弁護士と迅速な連携体制を構築しておくことが、企業としての信頼を守るうえで重要です。

3.“処分よりフォロー”が信頼をつくる! 事故後対応のポイント

上記までの事故処理が済んだあとは、以下の社内手続きと対応を通じて、再発防止の取り組みを進めることが必要です。

主な社内対応項目として

  1. 事故報告書の作成:事故の状況や対応について詳細に記録
  2. 事故原因の分析:運転者の行動、環境要因、設備面などを検証
  3. 再発防止策の実施:対象者への再教育、安全講習の実施、制度面の見直しなど

また、事故を起こした社員には精神的なダメージがあるはずです。ペナルティありきではなく落ち込む社員の職場復帰には十分な配慮とサポートが求められます。必要に応じて面談やメンタルケアの導入も検討しましょう。

4.企業の信頼は日頃の備えから

現代ではSNSなどを通じて、交通事故の情報が瞬く間に拡散されてしまう時代です。たとえ軽微な事故でも、対応次第では企業のイメージに大きなダメージを与える可能性があります。

日頃からの取組みが求められるものとして

  1. 交通事故対応マニュアルやチェックリストの整備と定期的な見直し
  2. 危険予測トレーニング(KYT)など安全運転講習の定期的な実施
  3. ドライブレコーダーやテレマティクスによる運転管理の強化
  4. 交通事故を想定した対応シミュレーション訓練の実施

万が一の事故は、いつ・誰にでも起こり得ます。だからこそ、事故を「起こさないため」の教育と、「起きたときのため」の備えは、企業にとって不可欠な危機管理のひとつです。

社員を守るため、そして企業の信頼を守るために、日頃からできることを地道に積み重ねていくことが、交通安全への一番の近道と言えるでしょう。

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